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デジタル・ラジオの行方
地上デジタル・ラジオ放送は,2006年内に計画されていた本放送開始のスケジュールがいったん白紙に戻されることになった。元々の計画は,2005年に示された総務省の「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇談会」の報告書に示された内容に基づき,VHF帯の7あるいは8チャンネルを利用して東京・大阪で本放送を開始する予定だった。その後2008年に主要都市でも本放送を始め,さらに,VHF帯で新たな周波数を加えて2011年には全国展開に向けた体制を整えるというものだった。総務省の懇談会報告の内容が白紙に戻るというのは,かなり特殊なケースといえる。
今回,白紙に戻される契機となったのは,総務省情報通信審議会情報通信技術分科会の下で発足した電波有効利用方策委員会における,地上アナログ・テレビ放送廃止以降のVHF/UHF帯電波利用に向けた検討(総務省の発表資料)のである。この検討の一環として,この周波数帯の導入を計画または想定している具体的システムを募集,VHF帯の利用を希望する提案も複数登場してきた。こうした中で地上デジタル・ラジオ放送だけを特別扱いできない,ということなった。
今回の決定を受けて,さぞ落胆しているのではないかと思い,これまで取材させていただいたことのある複数の東京地区の関係者に恐る恐る電話をかけてみた。しかし,かなり冷静に受け止めているようで,結論から言うと「大丈夫」とクチをそろえる。
例えば,東京地区では現行の実用化試験放送の出力電力を今年秋に3倍に上げることが計画されているという。地上デジタル・テレビ放送と比べると出力は小さいが,周波数帯域が低いこともあり,ワンセグなどに近いエリアに電波が届くようになると説明する。まだ市販が始まっていない受信端末の登場に向けて大きな追い風になるという。
現在行われている実用化試験放送と,本放送の違いは実は小さい。端末の市販も可能だし,放送側も広告の挿入などのビジネスは可能である。一番困るのは,2011年に向けて周波数が変わる可能性が捨てきれないことである。しかし,「元々の予定でも2011年になると,新たな周波数が加わる予定で,これを含めたフルサービスを利用するためには端末の買い替えが必要。最悪の事態は避けたいが,仮に周波数が変更になっても,天地がひっくり変えるほどの状況変化とはいえない」という。
一般論でいうと,総務省としても既に端末の市販が可能な実用化試験放送の免許を交付している以上,よほどの理由がない限り,周波数は変更できない。関係者も,現行周波数の継続利用については,大丈夫と確信しているようだった。むしろ,今回新たに発足した委員会の中で広く産業界を巻き込んだ周波数論議の中で周波数を確定した方が,今後の心配がなくなりビジネス展開の足かせがなくなるといえるだろう。
既にテレビ局によるワンセグのサービスは始まっているが,ラジオはもともとテレビとはまったく異なる番組を提供してきた。私自身,学生時代は,テレビはほとんど見ずに,深夜ラジオばかり聞いていた。投書をベースに作り上げる番組作りの手法は,同じ放送でもテレビにはない親近感や,楽しさを感じたものである。
ビジネス面で見ても,ラジオ放送はテレビ放送と違い腰が軽い。例えば,携帯電話機との連携でも,FM放送が先行する形でwin-winの携帯電話事業者との連動サービスを開始している。恐らく,地上デジタル・ラジオ放送にはこれからも幾多のハードルが待ち構えているであろうが,関係者の奮闘を期待したい。
( 田中 正晴(日経エレクトロニクス) ) - 2006/09/22
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